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ケンに3日前と同様に「今日は島奥の住宅訪問です。2時間くらい留守にします」と言い残して駐在所を後にすると、前回と同じ路肩で石原は早々に真に電話をした。
「優秀だろ? 三日で調べたー!」
「おかげで助かりました。僕、もう、限界だったんです」
「? 何の限界?」
真の素朴な疑問を
「いえ。いいですから教えてください」
受け流して本題をせかした。
真は
「結論!」
と、大袈裟に切り出した。
「……」
「…………」
わざと、かなり間をとった後
「……なーーーーーーんにも出なかった」
と、真は報告をした。
「はあ?」
放送事故レベル並みに間を取っておいて、それかと石原は憤る。
「ちゃんと調べたんですか?」
「超・調べたよー」
「大体、予定より早いし……」
(ん? ”超”?)
「真さん、また酔ってますね?」
「陸裕、『なるはやで』って言ってなかった?」
「言ってません」
「いやいや。陸裕が朝しか電話かけてこられないから、そうなると俺が非番の日になっちゃうのって、しょうがなくなくなくなくなくない?」
なんかギャルっぽい。
そう言えば、前回も酔っていた。
「さーせん、確かに酔ってたけど大丈夫。あの時ちゃんとメモってたし。ミミズののたくった文字で、俺以外読めないメモだったけど、ね」
「そのメモ、真さんも読めたんですか?」
「最初は読めなかったけど、頑張って解読した!」
言い方で、電話の向こうで真が親指人差し指小指を立ててポーズを決め、テヘペロしているのが見える気がする。
「……本当でしょうね?」
あまりの軽いノリに反して、石原のテンションはだだ下がりをみせた。
「疑り深いなー。俺、あの日非番だったんでその日のうちに頑張って色々調べたの。だから、割と早くに分かったの。褒めて!」
ギャルっぽく言われて、なんか嫌だ。
「……真さんはエライです……」
かつてこれほど褒めたくない気持ちに駆られたことがあるだろうか。
石原は絞り出すようになんとか褒めた。
「かっこいい?」
「……かっこいいです」
真の言葉に、まったく心ない言葉の復唱をする。
「イケメン?」
「イケメンですね」
「仕事速い?」
「速いです」
「いい人?」
「いい人ですね」
「スキ?」
「……それは」
言葉に詰まった。
予想していた答えに
「……ま、いっか」
と、真はあらかた満足したらしく語り始めた。
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