04-3.後

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(分かりやすいですね)  石原の話にいちいち反応してしまうケン。  余裕をなくして、さすがに仏頂面でいられなくなっていた。 「い、石原さん……」  石原の考えた通り、ケンは目尻を赤く染め、狼狽えて口元を手の甲で隠した。  さっき見たあの時と似た表情に、石原は(見間違いじゃなかった)と確信すると共に、背中をぞくりとするものが走った。 「その……み、見てたのか……?」  ケンは、竹との話をまんま信じてくれているようだ。  意図的に覗いた石原に、ほんの少しの罪悪感が横切る。 「……はい」  だけど、今は追及の手を緩めるわけにはいかない。 「じゃあ、俺があんたをどんな風に見ているのか分かったんだろ?」 「少なからず」  思ったよりも淡々と、ケンと話せている自分に内心驚いていた。 「本気ですか?」 「本気だよ。悪いかよ」 「悪く……は、ないですね」 「じゃあ、いいのかよ?」 「そうですね。どちらかというといいです」 「あんたの隣で寝ている男が、あんたを想像してサカってもいいのかよ」 「いいですってば」 「それ、言っている意味分かってんのかよ?」  のらりくらりとした石原の受け答えに、ケンが焦れた。  すると今度は石原の方が 「ケンだって分かっています? 僕、男なんですよ」  と嫌な念押しをしてきた。 「知ってるよ」 「それでもいいんですか?」 「全然いい!」  思わずケンは叫んでいた。 「……むしろ、石原さんじゃなきゃダメだ」  ぼそりと付け足した。 「……」  おもむろに石原は無言で立ち上がり、駐在所の出入り口の鍵を閉めた。 「何を……?」  石原の意図を測りかねて、ケンが戸惑う。 「また竹さん辺りに踏み込まれては困りますから」 「え?」 「駐在所が閉まっていることなんて、よくあることです。警邏で出かけていると思われるだけですよ」 「……」  ケンがごくりと唾を飲む。 「人に聞かれては困るんです」 「あの、石原さん……?」  上ずった声で石原の真意を確かめるように名を呼ぶと 「ケン……」  同じように名を呼び返す石原が、制服の上着を脱ぎ捨てた。  ワイシャツとネクタイ姿になった石原が、ネクタイを緩めながらケンににじり寄った。  あまりの石原の剣幕に押され、石原と一定の距離とりながらケンは後ずさるように生活スペースの方へなだれ込んだ。
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