04-3.後

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(あまり手の内は見せたくなかったのですが、仕方ないですね)  故意にか無意識にか、過去の話をしないケンに石原は思い切って 「いい加減本当のことを話したらどうです? ウラは取れているんですよ、緒方……堅志朗くん」  真から聞いた話をちらつかせた。 「!」  ケンの顔色が変わった。 「……どこまで知っているんだ?」  声を低くし、口調さえも出会った頃の冷たさを纏った。  さっきは抱きしめようと近付いた石原に、逆に少しばかりの距離を置き、眼光鋭く睨む。 「君が正直に話したら、僕も話しますよ」 「なんで、俺が……!」  一方的に理不尽な取引を強いられ、ケンは即座に文句を口にしたが 「君が言わないなら、僕も言いません」  石原は動じずに突っぱねた。 「……」  しばらく睨み合いが続いた。  だが、()があるのは石原の方だ。  ケンは本名を言い当てられている。  それが、「ネタは上がっている」という石原の話に信憑性を強く持たせた。 「僕は、君の過去を君の口から聞きたいんです」 「過去……」  よほど知られたくないのか、ケンは気まずそうに石原から視線を外した。 「さっさと吐いちゃった方が、君の為でもあるし僕の為でもあるんです。お互いの為に話しちゃいましょう」 「……石原さんの、為?」 (どういう意味だろう?)  ケンの視線が揺れる。  自分の過去を知ることが、何故石原の為になるのか理解できない。 (それって……、俺と秘密を共有したいということか?)  石原に何の得がなくても、むしろマイナスでもいいというのか?  これまでもそうだったように。  何のメリットもないのに、行き場のないケンに住処だけでなく毎日の生活も提供してくれた。 (だけど、石原さんはオマワリだぞ。その人に喋るのはリスク高くないか?)  そして、最悪なことを想像してしまう。 (そうまでして、俺を捕まえたいのか?)  犯人確保となれば、石原の手柄だ。  そこにメリットが生まれる。
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