04-3.後

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 それからケンは、「兄貴」の存在や彼にパシリとして働かされていた話。その上で暴力行為や駅裏で兄貴の薬物販売なども手伝ったことを石原に話した。 「では、君が率先してやったわけじゃないんですね」 「率先と言うか……兄貴の家に住まわせてもらってたんで、家賃代わりに手伝ったよ。兄貴が居なくても、兄貴が日時指定したところに一人で行ってしたこともある」  元々は、施設を出て真っ当な所で働いていた彼に、住処と仕事を提供すると引っこ抜いたのはその兄貴だろう。 (いいように利用されているな)  大柄な体格も、ちょうど良かったのだろう。  彼の体格に、金髪、ピアスに派手な格好。一般人を脅すには、ちょうどいい。 「兄貴の家に彼女来た時はそこに居られなくて、よそんちに泊めてもらったりしたから、いつでもそこに居たって訳じゃないけど」 「その代償は?」 「は?」 「君のことです。よそんちでも宿泊代として何かしたんでしょ?」 「鋭いな、石原さん」 「君、会った時から『ギブアンドテイク』でしか話ししてなかったし」 「えっと、こういう流れで非常に言いにくいんだけど……。よそんちっていうのは、知り合いのおねえちゃん達の部屋で……まあ、こういう時は、大抵」 「セックスでお礼ですか」 「な……!」  ケンの顔に朱がさす。 「何、今更照れているんです? やくざの常套手段でしょ? 僕、警官ですよ。そのくらい知ってます。そちらの世界じゃ巧い方が生き易い。手術してパール入れるくらいだし」 「うん、まあ、そう。結構喜んでもらえて……。って何、怒っているの?」 「妬いてるんです」  ぷうっと頬膨らまし唇を尖らせる石原には、いつもの笑顔が消えていた。 「い、石原さーん!」  思わずケンは石原に抱きついた。  今度こそ石原は逃げずにそれを受け止めた。  ケンは、上から二つまで外されていたワイシャツのボタンを荒々しく外していく。 「……思ったよりも紳士ですね。引き千切られるかと思いました」 「ただのシャツならそうしたかもだけど、ケーサツ官の制服破るのは、怖ー。それに縫うの、俺だもん」 「確かにそうですね」 「何、荒々しくされる方が好き?」  泊めてもらったお礼にセックスするような生活していたケンだ。 「そういうおねえちゃん、居たよ。ストッキング破られると興奮するんだって、さ」  きっと様々な要望に応えてくれるのだろう。  2秒ほど考えて石原は、 「……お手柔らかに。僕、もうすぐ三十路なんで」  と答えるのだった。
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