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「け、ケーンっ!」
「んー……?」
構わず舌先で耳の中を嬲る。
ぴちゃぴちゃという水音に、耳の中を犯されているような錯覚に陥った。
「それ、やめっ……! んー……!」
ケンを押しのけようと下から腕で押し上げているようだが、ケンの分厚い胸板はビクともしなかった。
「ん……、んぅ……」
耳への愛撫とムダな足掻きに石原は疲れたように、はあ、はあと立て続けに大きく息を吐いた。
「……石原さん、頑張りすぎ」
身長差がかなりあるため、まるで石原をすっぽり覆い隠すようにケンは被さていた。
真下の石原に向かって、呆れたように言うと
「誰の所為ですか?」
石原がきつく睨んだ。
だが、ケンの視線はもう額の方に移っていた。
今度はそっと生え際を親指でなぞる。
「ずっと、欲しかったんだ」
「……?」
「ずっと、こうしたかった……」
そういうとケンは額にキスを落とした。
真夜中に忍び寄って、石原の顔をガン見する。
あの謎の儀式の意味はそういうことだったのかと、石原は思った。
「……したら良かったのに」
何故かキスを落とした額の一部を撫でまくるケンを見上げ、石原は言う。
「だって、そうしたら俺、止まる自信なんかないよ。後は突っ走ってしまうだけだから、さ。それは、やっぱまずくない? 相手の気持ちも聞かずに、無理矢理やっちゃうのは」
「……僕は待っていたんですけど、ね」
(え? 石原さん、なんかサラリとスゴいこと言ってない?)
撫でていた指が動揺でピタリと止まる。
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