04-3.後

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「け、ケーンっ!」 「んー……?」  構わず舌先で耳の中を嬲る。  ぴちゃぴちゃという水音に、耳の中を犯されているような錯覚に陥った。 「それ、やめっ……! んー……!」  ケンを押しのけようと下から腕で押し上げているようだが、ケンの分厚い胸板はビクともしなかった。 「ん……、んぅ……」  耳への愛撫とムダな足掻きに石原は疲れたように、はあ、はあと立て続けに大きく息を吐いた。 「……石原さん、頑張りすぎ」  身長差がかなりあるため、まるで石原をすっぽり覆い隠すようにケンは被さていた。  真下の石原に向かって、呆れたように言うと 「誰の所為ですか?」  石原がきつく睨んだ。  だが、ケンの視線はもう額の方に移っていた。  今度はそっと生え際を親指でなぞる。 「ずっと、欲しかったんだ」 「……?」 「ずっと、こうしたかった……」  そういうとケンは額にキスを落とした。  真夜中に忍び寄って、石原の顔をガン見する。  あの謎の儀式の意味はそういうことだったのかと、石原は思った。 「……したら良かったのに」  何故かキスを落とした額の一部を撫でまくるケンを見上げ、石原は言う。 「だって、そうしたら俺、止まる自信なんかないよ。後は突っ走ってしまうだけだから、さ。それは、やっぱまずくない? 相手の気持ちも聞かずに、無理矢理やっちゃうのは」 「……僕は待っていたんですけど、ね」 (え? 石原さん、なんかサラリとスゴいこと言ってない?)  撫でていた指が動揺でピタリと止まる。
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