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「陸裕ー!」
石原の姿を見とめ、真が両手を広げて駆け寄る。
「真さん……っ!」
石原はすかさず数本のペットボトルを、近くの空ベッドのテーブルに置いた。
おもむろに腕を上げ、真を迎える。
「会いたかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉお、お?」
どすんという音と共に、真の身体が宙を舞い、先ほどペットボトルを置いた空きベッドの上に落ちた。
「……今、何をしたの?」
一部始終を見ていた筈のケンが、二人のあまりの行動の素早さに分からなかったらしい。
「背負い投げ。……してみました」
答えつつも、石原は買ってきたペットボトルをケンのロッカー下の冷蔵庫に手際よく詰めた。
「あれが、チョコプラのよく言っているヤツか。本物を見たのは初めてだ」
感心して言うケンに
「元ネタはIKKOさんですよ」
冷静な石原のツッコミがあった。
「なんで空きベッドに投げるんだよ、陸裕ー」
文句たらたら空きベッドから降りてくる真に
「冗談でもケンのベッドに投げるわけないでしょ。ケンのベッドに入っていいのは僕だけです」
「……神罰は、石原さん自らが下したな」
ケンは、すかさず追い打ちをかけた。
「あ。もしかして、聞いてた?」
ほんのり頬を赤らめて、ペットボトルを詰める作業に勤しんでいる風を装いケンと目を合わせない石原の照れた様子から、ケンは推測した。
「はい」
「どの辺から?」
「えーっと……『石原さんの言った言葉には意味がある』みたいな辺りから」
冷蔵庫のドアをバタンと閉め、石原はケンに向き直った。
「僕は、もうこれ以上ケンを好きになれないと思っていましたが、認識を改めました。ますます君を好きになれそうです」
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