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いつ逆恨みされるとも限らない職務質問を石原はする。
でも石原は「見たら分かります」と言う。
これは一種の才能じゃないかと真は思う。
(そういえば、こいつ、カルタの練習にかこつけて俺が手を握ろうとしたら必ず避けやがったな)
よく人の行動を観察して、相手の感情を読みとれるようだ。
警邏の時にも、石原は事故りそうな車や怪しい車をよく見つけていた。
「なんというか、運転に殺気を感じられて」
「殺気?!」
殺し屋か?!と、真が半笑いで聞くと
「大した隙間もないのに割り込んだり、何度も車線変更するのは、殺気立っている証拠です。そういう車は、事故を起こすか、起こされるか。大抵、なんかやらかしますから」
と言っていた。
「ま、でもああいったカマかけるみたいなやり方、いつか訴えられるぞ」
「そうですね、気をつけます」
素直な返事だが、あまり気を付けそうにないなと真は思った。
「そうなったら、俺に言え。いざとなったら、友人に弁護士の卵がいる。まだ卵だからなんとかできるかもしれないけど、なんともできないかもしれない。だから、あんまり無茶するな」
複雑でなんとも曖昧な言い方に、思わず石原が吹き出した。
「頼りになるのかならないのか分かりませんが、志々目さんのお世話にはならないようにします」
告白して以来、何かと距離を取りたがる石原だが、やはりこうして以前と同じように笑ってくれると嬉しい。
だけど、やはり心配は尽きない。
「お前のやり方って『石橋を叩いて渡る』って諺があるけど、なんというか、それと似て非なるものというか……」
「なんですか?」
「ほぼ、陸裕の勘だろ?」
「失礼な。何度も言いますが、ちゃんと根拠ありますってば」
「その根拠が分かりにくい。だから、俺からすると『石橋をたたいて渡るより、壊れる前に走って渡っちゃえ』みたいな印象を受けるんだよね」
その心配を包み隠さず話してしまう真に
「やっぱり失礼な感じしかありませんね」
石原は呆れるしかなかった。
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