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「ああ、もう! 真さん。自分で止血して!」
キレたように石原が、自分での止血を諦める。
「は? 俺ぇ?」
無事な方の手で自分の出血する手の手首を押さえろと、石原は真の左手を取った。
(無茶ぶりしやがって。右手の痛みが強過ぎて、左手だって力入らねえよ!)
だが、丸投げしたくせに未だオロオロしつつも血まみれの手を掴んで離さない石原の手の上から、言われるままに自分の左手を力なく押し当ててみた。
「!」
石原がビクリと一瞬固まったが、その後ゆっくりと息を吐き出し
「……良かった。真さん、あったかい」
と呟いた。
石原に言われたから左手を寄せてみただけだったが、それが触れて石原が少し落ち着いたようだった。
「……どうでもいいけど、さっきから俺のことを『真さん』って呼んでいるよ、陸裕」
「あっ……。すみません」
居心地悪そうにする石原に、真が畳みかける。
「なあ、陸裕。やっぱ、俺たち、付き合お?」
「どうして、そうなるんですか?」
ぷいっときまり悪そうに視線をはずす石原に、
(男は、視線を合わさない時は嘘をついている時……だったよな)
前に石原が教えてくれたことを思い出した。
(と、いうことは、今の陸裕の言葉は本心ではない)
確信した真は
「な。陸裕」
と強引に付き合う話を混乱のどさくさ紛れに取り付けたのだった。
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