02-3.後

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「あ、すげ。いいっ……」 「変な声出さないでください。お隣さんに聞こえますよ」  独身用に作られた1LDKが9部屋の集合住宅。  端部屋だったが、壁がそこまで厚いとは思えない。  浴室だと、声も響く。 「だって、陸裕。……うまい」  僅かに声を潜める真に 「これで誉められても、嬉しくないですね」  と言いつつも、石原は休むことなく巧みに手を動かしていた。  根本の方から裏筋に沿って強めに扱けば、真がふるふると身じろいだ。  丁寧にゆっくりと、確実に昂るそれを上下に擦る。  泡が先端に触れぬように注意深く、手を動かす。  とても真の顔を見ることができない。  すると、視界に入るのは真のものだけ。 (なんだろ、変だ……)  抑えきれない動悸に戸惑いつつも、石原は夢中で真に触っていた。   「ぁっ……!」  突然、真が小さく声を上げた。  同時に白濁の液体が勢いよく飛び出した。 「ん……っ、ぅ……」  なかなか収まらない衝動を、真が声と同時に絞り出す。 「……」  頬を高揚させて石原が惚けたように真を見上げていると、やがて視線に気付いた真が 「俺だけ、ごめんな。手、治ったら、いっぱいしような」  とにっこり笑うのだった。 「……ふざけたことを……」  毒づくわりには石原の表情は柔らかい。  自分の奉仕で達してくれたのが、嬉しいのだろう。    真が目を細めて笑うと、石原はその瞳に吸い寄せられるかのように自分から顔を近付けていた。  真は泡まみれの左手で石原の右頬をとらえると、そっと石原の唇にキスを落とした。
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