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「あれ? 一人で飲んだんですか?」
キッチンの片隅に、洗ったビールの空き缶が1本。
「うん。快気祝いに、ちょっとな」
酔った様子があまり見られない真に
「快気祝いって一人でするもんでしたか?」
「陸裕、もう昼飯食べたって言ってたし」
「夕飯は一緒にしましょうね」
石原は、悪びれずにスーパーのレジ袋を掲げてみせる。
「だったらケーキも買ってきた方が良かったですか?」
「いらない。陸裕がいい」
「はいはい」
「『はい』は、一回」
学校の先生のようなことを言う真に
「ちっ。めんどくさい酔っぱらいですね」
心底、石原は思った。
「ビール1本で酔うかよ」
言いながら、石原と肩を組むかように捕獲すると、14時を過ぎたばかりだというのに、寝室にずるずると連れ込んだ。
シフトは頭に入っている。
石原は夜勤明けだ。
すると今日の午後から明日までは休み。
夜勤明けで多少疲れてはいるだろうが、ここに来てくれたのだ。
これからの石原の時間を、自分と過ごしてくれる。
想像するだけで、幸せな気持ちになった。
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