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それは、もう9年も前の話になる。
1月だった。
例年通り、成人式やセンター試験辺りで雪が舞うような寒い冬。
石原陸裕(いしはら みちひろ)、当時21歳。
いつものように6時に目が覚めると、隣に裸の男が寝ていた。
「え? 誰?」
ショックで真っ青になりつつ呟くと同時に
「え? ここ、どこ?」
と戸惑った。
真ん中で帯のように区切って色を変えた壁紙。
黒いパイプベッド。
さっき時間を確認したフォトフレームのデジタル時計も、すべてが、質素でつつましい自分の住まう官舎ではないことを語っている。
一体、ここはどこなのか、手がかり求めてきょろきょろと見回す内に、
「……っ!」
身体をひねった弾みで、ずくりと腰に鈍痛が走った。
(まさか……?)
自分も全裸。
相手も全裸。
たどり着く答えは決まっている。
ベッドに合わせた黒いシーツのほとんど重力を感じさせない羽毛の掛け布団を、おずおずと持ち上げた。
「……(誰だよ、相手)」
不安と妙な期待で鼓動が早くなる。
思い切って、横に寝ていた男の顔を確認して、石原は愕然とした。
「嘘だろ?」
自分の目を疑った。
苦手と思っている同僚・志々目真がそこに居た。
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