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「……」
真は
(たぶん、褒められているんだよな)
と、またもや微妙な表情になりつつ
「一度、入っているのだが……」
と答えた。
「それ! それなんです!」
急に石原は声を荒げた。
「実はですね、それを全然覚えてないから……」
言い淀む石原に、真が
「だから?」
と促す。
逡巡して石原が
「真さん……、言いましたよね。『可愛かった』って」
前回、酔ってシた記憶はなくしているが、その次の朝のことはさすがに覚えていたらしい。
「何がどう可愛かったのか、僕は覚えていません。だから、どうしたら真さんに可愛く思ってもらえるのかさっぱり分からないんです。それで、その……ご、ご期待に沿えないかもしれないと思うと、やたらと不安で……。あっ」
そこまで言うと、何かに気付いたらしく石原は
「あ、あの。すみません。僕、何を言っているんでしょう?」
赤くなって俯いてしまった。
少しして、石原の言ったことを反芻するように考えていた真が
「……大丈夫。陸裕はいつでも可愛いから」
と言った。
「!」
石原は顔を赤らめて、それでも眉をつり上げ
「20代の男が、可愛いと言われても決して嬉しくなどないです!」
と反論したが、真は
(どうしろというのだ、この男は……)
と半ば呆れた。
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