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「じゃあ、やめる?」
と聞くと
「え? どうしてそうなるんです?」
石原は困惑した。
「だって、イヤなんだろ?」
「嫌じゃないです」
(さっき「もげたらいい」とか恐ろしいことを言ってたくせに)
「だって、さ。陸裕は俺の手の怪我のことで負い目があるだろ。それで、こういうことをさせてくれるって言うのなら、それは筋が違うって話だし」
「は? あの……?」
「そこんとこは、義理とか負い目とかでなく、俺は好きだからしたい訳で」
「いや、あの」
「気持ちもないのにするのは、おかしいだろ? 陸裕が体で恩返し……みたいに思っているのなら、俺は逆にしない方がいい」
「負い目……」
石原が呟いた。
それで真が
「負い目を感じることなんかないよ。あの場であれを目撃したら、相手が誰であろうと助けに飛び出したし、誰だってああしたと思うよ。考えるよりも行動してたってパターンかな?」
「……それって」
明らかに石原の声が沈んでいた。
「僕じゃなくても、真さんはああしたってことですか?」
「え。あ、いや、えっと……」
どう答えたら正解なのだろう。
石原に負い目を感じて欲しくない。
けれど明らかに石原は、今の真の言葉に気落ちしている。
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