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「えーっと……。そうだけど、そうじゃない」
どう言ったら、石原に自分の気持ちが正しく伝わるのだろう。
真は言葉を選びまくっていた。
「意味が分かりません」
詰め寄るような石原の強い視線に、真は気圧され
「えーっと……だな。お前だったから、気になってずっと見ていたし、そのおかげですぐに飛び出すことができた……」
手探りみたいに自分の気持ちを言葉にしてみる。
「……じゃ、ダメかな?」
自分のことなのに、思わず石原に
(今ので「正解」か?)
答え合わせのように聞いてしまっていた。
「……いいです」
石原の表情を見て、真はほっと胸をなで下ろした。
「だったら、いいんです」
少し頬を赤くして、石原は自分自身に言い聞かせるようにもう一度言った。
「そういう陸裕はどうなんだよ?」
「むしろ、や……やりたいです。その……前回覚えてないので、これが真さんとの初めてみたいなもんだし」
さっき、心の準備がどうとか言ってなかったか?
「ん?」
心なしかビール以外の匂いがする。
酒の匂いを漂わせる石原に、真は
「陸裕。まさかお前……」
恐る恐る聞いた。
「心の準備ができず、近くのコンビニでワンカップを少々」
「どこのおっさんサラリーマンだ?」
昼ご飯のお供にビール一本飲んだ自分の方が、まだ可愛いと真は少なからず思った。
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