02-3.後

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「だからって、お前まで飲んじゃって。また記憶なくしたらどうするんだよ?」 「真さんと同じで一杯だけだから、大丈夫です。景気付けです」  自分と似たようなことを言う石原に (俺とのセックスには景気付けが要るんか?)  と思ってしまう。 「無理させたくない」  と真が言えば、 「無理じゃないです。むしろ、したいんですってば」  売り言葉に買い言葉的に返事がくる。 「いいのか?」 「僕は…………負い目でもなんでもないです。ま、真さんのことが好きだから……したいんです」 「え? ごめん。聞き逃した。もう一回言って」  と言ったが 「そう言っている時点で、聞き逃していないでしょ? もう色々考えちゃう前に、ヤってしまいましょう」  石原は相手にしてくれなかった。 (出たよ、陸裕の「危ない石橋は走って渡っちゃえ」作戦!)  真は思いつつも、今度ばかりはそれに助けられた気がした。 「あ、右手を見せてください」  不意に、石原が真の手を取った。  治ったという右手には、確かにかさぶたとその下に新しい皮膚がしっかりできている。古い角質がガサガサになって、見事なまでの一直線の傷の通りにまとわりついていた。 「こっちの手、あまり使わないでくださいね。ばい菌入ると困るので」 「陸裕は、ばい菌じゃねえ。むしろ、聖……」 「はいはい。もう、そういうのはいいです。利き手使えない分、僕、協力しますんで」 「?!」 (今、何て言った!?)
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