01.志々目真という男

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 同じ交番勤務ではあるが、真は大学出の22歳。  高卒で警察官になった石原は、真よりも三年も早く働いている。仕事上では先輩。  やはり同じ交番勤務の上司・岸田から「年も近いし、話も合うだろ? 有望な新人君の世話を頼む」と言われたこともあり、石原が細々と世話を焼いていた。  だが、年は真の方が1歳年上。  なんとなく、……いや、かなりやりにくさを感じていた。  苦手と思う理由は、他にもある。 (いや、その所為でこんな朝を迎えたのか……?)  色々考えてはみようと試みたものの、考える材料が足りなさ過ぎて、どうしようもできない。  石原が考えあぐねていると、隣で寝ている真がゴロンと寝返りを打った。 「ん……」  小さく呟いたかと思うと、そのまま目を覚まし 「おはよう、陸裕(みちひろ)」  隣で微妙な表情している石原に、嬉しそうに声をかけた。 「だっ……!」  早朝だというのに、かまわず石原は声を張り上げた。 「誰が『陸裕』です?!」  今の今まで、そんな呼ばれ方などされたことない。 「ん? おまえだろ」  さも当たり前と言わんばかりに指さされれば 「そんなことは分かっています!」  自分を指し示す失礼な真の指をむんずと握り、腹立ち紛れにあらぬ方向に曲げた。 「イテ!」  慌てて真は、無礼な指を引っ込め 「なんだよ、もう」  と言いつつ指の安全を確認する。 「意味、分かんね」  と非難めいた声を上げた。 「それはこっちの台詞です!」  なぜ、どうして、こうなったのか。
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