03-1,前

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「陸裕、すまない。とうとう……見合いをすることになった」  真がこの世の終わりのような顔で石原に告げた。 「はあ」  珍しくもない。  これまでもそんな話、石原は何度も聞いてきた。  だけどいつだって真は 「おまえが居るのに受ける訳ないだろ?」  と頑なに断っていたのに、今回は珍しいなと石原は思った。 「岸田さんに勧められて……」 (それで、か)  相手も考えたなと思った。  志々目真28歳。  30歳手前でそれなりの出世頭。  黙っていれば、いい男で通るのだ。 (喋ったら、ただの甘えん坊ですけどね)  元々、頼まれたら断れない性格だ。  石原のことがあって頑なに断り続けていたが、同じ内勤で恩ある岸田経由のお見合い話となっては、断れなかったのだろう。  相手は、警視の娘さんだそうだ。 「いいお嬢さんなんだ。向こうの親父さんはお前のことをめちゃくちゃ気に入っているし、お嬢さんの方もこの話をしたら乗り気ならしい。頼む。一回でいい。会ってくれ」  と岸田に言われ、どうしても断れなくて受けてしまったらしい。  岸田の口ぶりから、岸田はこの話を真にとっていい話だと思い込んでいる。  だからごりっごりに押してきた。 「断れない理由が真さんらしいですね」  石原も真の性格は熟知していたので、仕方ないなとは思っていた。
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