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結局見合いをした。
その日に断るのも角が立つと、次に伸ばした。
次に会った時にも
「断ろうと思ったけど、言い出そうとしたら相手になんか知らんけど泣かれてしまって……」
と言えずじまい。
そのまま、また会うことになった。
「次に会ったら、必ず陸裕のことを言うから」
こんな調子で、言い出せない雰囲気になっては、また会うを繰り返し、なし崩しに付き合うことになっていった。
「次に」「次こそは」と、もう何度言われたのだろう。
(割とありがちなパターンかな? まあ、いいですけどね……)
付き合って6年も経つと、石原相手になあなあになりがちだった。
その上、1度や2度会って言えない、もしくは会わないという選択肢が出てこないというのなら、もはや真の性格上そう簡単に切れない関係になっていることは予想できた。
「今日は、泊っていかないのか?」
真の部屋に寄って、夕飯を食べて帰ろうとする石原に真が声をかけた。
「連日連夜じゃ、真さんもバテるのでは?」
石原がすげなく言うと、真は黙ってしまった。
(ふーん。やっぱり、そういうこと……)
勘のいい石原にこれで伝わらない訳がない。
ただ
(もしかして、そうなのかな?)
と想像していた時よりも、疑っている本人からの肯定に、ずっと大きい動揺が石原を襲う。
これまで感じたことのないどす黒い感情が、腹の底よりふつふつと湧く。
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