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しばらく連絡取り合わない日々が続いた。
それまでは休暇を合わせて取り、共に過ごしていたのにどちらから折れることもなく、一週間経ち、二週間が経った。
一ヶ月経つ頃に、石原が書類を提出しに警察署を訪れた時だった。
たまたま真に廊下で会い、
「少し時間いいか?」
と誘われた。
地階の自販機の前で、共にコーヒーを買い、備え付けのベンチに座る。
久しぶりに会った真は、なぜか晴れ晴れとした顔をしていた。
(何を言われるんだろう……)
真の人懐っこい笑顔に、うっかりと付いてきてしまったが、石原に不安がよぎる。
「あのさ、この間はごめん。自分のことを棚に上げて、本当に悪かったと思っている」
(本当ですよ)
「でも、陸裕の本心が知りたい」
(言える訳ないでしょ)
「俺たち、もう、絶対にダメなのかな?」
「二股かける気ですか?」
「いや、あの、女性は彼女一筋で、男はお前一筋……ってわけじゃダメかな?」
「ダメでしょうね。すごく都合いいと思いますよ」
「俺としてはだな……陸裕と一緒に居たい。でも、彼女も大切にしたい」
「彼女を大切にしたいと言っている時点で、僕のことは諦めるべきですね」
「うーん……。陸裕も付き合ってみろよ。女性もいいもんだぞ」
「は?」
石原の方は怒るよりもむしろ
(この男は、6年もつきあって、僕のことをこんなにも理解していないのか)
と呆れた。
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