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さっぱり覚えがない石原は、苛立たしげに真に聞いた。
「何が、どうして、こうなったんですか?」
聞いた後に、
(しまった)
と少し後悔した。
「え? 何? 陸裕、昨日のこと覚えてないの?」
真が明らかに落胆の色を浮かべたからだ。
そう言われると、なにやら自分がとても不実なような。
「昨日、かるた大会の後の打ち上げ終わって、そのまま俺んちにおまえが来て、一緒に家飲みしたんだけど」
「僕が、君の家に?」
アリエナーイと石原が何ら隠さずに顔で答えれば
「え? それも覚えてないの?」
真はシンジランナーイと目を見開いた。
毎年恒例になった交番対抗カルタ大会の後、打ち上げがあったのは、ちゃんと覚えている。
カルタ大会の打ち上げと新年会も兼ねている。
もちろんその場にこの男も居たし、当然、自分も居た。
(だけど、その流れでこの男の部屋に来た?)
どうやら、その辺から記憶がない。
「俺がおまえに告白して、その後、俺んちで家飲みしようって誘ったんだよ。そしたら、おまえが『いいよ』って言ってくれたんで、俺んちで二人で飲んで、その流れで……、その……セ……、セ……、セ……」
大の男が二人。
家飲みの時に、仲良く「せっせっせ」をしたとは到底思えない。
「セックスしたとでも言うのですか?」
言い淀む真の代わりに、石原が言うと
「きゃー」
と真がふざけて枕に顔を伏せた。
照れ隠しにそんな態度をとったのだと石原にも分かったのだが、余りにバカな反応に、石原は怒れず、ただ無性に苛立った。
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