03-1,前

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「で、いくら欲しいんだ?」  真面目な顔をして言うと、石原が 「いくら……というか、犬が欲しいんですよ」  と答えた。 「犬……?」 「はい」 (手切れ金とか、らしくないこと言うなと思っていたら……)  強請られたのは、なぜか犬だった。 「犬か……。……ブリーダーに知り合い一人いる。柴犬でいいか?」 「願ったり叶ったりです。というか正直驚きです。どれだけ交友関係広いんですか」  だが、納得はできる。  元・恋人の自分さえ手元に置きたがる男なのだ。この志々目真という男は。  つき合いの深さは色々だろうが、とにかく誰とでも広くつき合うことに長けている。  きっと、人と疎遠になることはあっても、徹底的に切れる・嫌われるという経験はないと思われた。
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