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03-2,後
「真さん!? また、来てるんですか?!」
石原が病室に入った途端、またもや真がやってきている。
しかも、毎度毎度ケンに過去の話を聞かせている姿を見て、文句しか出なかった。
ケンが石原を庇って足に銃創を負い、離島からこの病院に搬送されて治療して4日が経つ。
そこに、真はほぼ毎日来ていた。
「いい加減仕事に戻ってください。ケンが困っているでしょう?」
「お、陸裕。待ってたよー!」
真が大げさに両手を広げ、石原に迫った。
だが、それこそもう何度目の同じリアクション。真の行動を読み切っている石原は、すばやく腕をかいくぐってケンのベッド脇に移動した。
「だって、お前。俺のあげた犬に俺の名前を付けてたとバンケンくんが言うんだもん。だったら、俺とお前の昔の話だって聞きたかろうと思って」
「そうなんですか? ケン」
じろりと石原が睨むと、居心地悪そうにケンは病床の掛布団を引き寄せつつ
「だって、気になるじゃないか。まこりんと石原さんの過去……」
ぼそぼそと言い訳をした。
石原がやってきては、中断する真の話。
その続きを聞きたくて、ケンは日々うずうずと真が見舞いにくるのを待っていた。
(本当だったら、絶対に会いたくない相手だけど)
石原の元カレと聞いて、会いたいはずはない。
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