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「だいたい、ですね」
情報源のケンを石原が睨み付ければ、ケンはカメのように首をすくめて布団の中に顔を潜ませた。
「好きで『マコトさん』と名付けた訳ではありません」
「え? 違うの?」
明らかに落胆した真と嬉しそうにひょこっと顔を出すケンに
「離島に一人で行くのに、寂しいからって、わざわざ元彼の名前つけます? そんなの未練たらたらで、自分の傷、抉りまくりじゃないですか。僕がそんなセンチでドエムなことをする人間に見えますか?」
「見えた」
真は即答し、ケンは
「……見えた」
と控えめに返事をした。
「さっきから、何なんですか? 二人して声を合わせて……」
石原が呆れていると
「合わせようとしているわけじゃない」
ぼそぼそとケンが反論する傍ら
「じゃあ、どうして? どうして『マコト』って付けたんだ?」
期待を裏切られた真が必死に食らいついていた。
「あんなに可愛いんです。せっかくだから、とびっきり良い名前を付けようと思ったんです。でもすぐに良い名前が思い浮かばなかったので、マコトさんには一週間の猶予をもらいました」
「そこで人間の法律を適用すんなよ」
真はつっこんだ。
「なんだか、真さん。法律に詳しくなったんですね?」
「試験あるからな。一応、それっぽいことは勉強した」
と二人でわちゃわちゃ話している横で
(まじめな石原さんらしいな)
とケンは思っていた。
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