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おしゃべりな竹は、ケンに石原が島に来た3年前の話も聞かせてくれた。
「えらく若いお巡りさんだね。そんなんで勤まるのかい?」
駐在所の近所に住む竹は、不躾なことも平気でしゃべりまくるおばあさんだった。
石原からの挨拶は無視するが、自分の言いたいことは言う竹に、石原は
「若輩者ですが、精一杯頑張ります」
と強張った笑顔で答えていた。
観光を売りにし始めた島の住人は、まだ閉鎖的な色を濃く落とし、新しく着任した駐在にたやすく心を開かなかった。
いわゆる「ヨソ者」に対する態度は厳しい。
その前任者だと、もっと煙たがられた存在だった。
石原の前任者は50代のベテランだったが、そんな閉鎖的な島民を快く思っていなかった。
島民のために、警邏もしないし、もちろん立ち番もしない。
漁業が主産業のこの島は平和で、実際に犯罪も喧嘩も起こらなかった。
まれに起こるのは交通事故の処理程度。
それで、前任者は四六時中、釣りをして過ごしていた。
一人で勤務していたので、諫める同僚も居なかった。
それでちゃっかりもらうものもらっているのかと島の住民の反感を買っていた。
島民は陰口を叩いていたし、中にはあからさまに
「釣りばかりして」
と、文句言う者もいたが、それに対し前任警察官は
「なにもないこの島で、警察官の私のすることがない。平和で、いいじゃないか」
と言い返していたらしい。
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