01.志々目真という男

5/9
前へ
/133ページ
次へ
 そのうちに、気付いた。 (あ……。こいつ、一回寝たら彼氏ヅラするタイプってヤツだな)  呼び捨てに、急に納得できるものを感じた。  それと同時に (確かに昨日、何やら妙な夢を見た気がした)  うすらぼんやりと、人には絶対に言えないアール指定な夢を見たことを思い出した。 「すみませんが、僕、覚えてないんで」  床に落ちている服を拾って帰ろうとしたが、 「……っ!」  動くと腰がずくりと内側から鈍く痛む。  その所為で、なんだかぎくしゃくとした動きしかできない。 (あー、なんだって、こんなことに。しかも、ほぼほぼ記憶ないのに)  恨めしげに真を振り返って見たら、そちらはもっと凄い形相で睨んでいた。 「……酒に酔っての不埒な行動で済ます気か?」 「不埒なことしたのは、志々目さんの方でしょ? どうやら僕はされた方ですし」 「志々目さん?」 「はい?」 「昨夜から陸裕は、俺を『真さん』と呼ぶ間柄になったんだが」 「は?」 「真さん、真さんって言って、俺の首にしがみついてきて、めっちゃ可愛かったんだが」 「……っ! す、すみませんが!」  あまりに恥ずかしいことを言う真の言葉を遮り、 「……すみませんが、それも覚えてませんので」  申し訳なく思い、目を反らしながら言うと 「すべてなかったことにするのか?」  真の表情が暗く沈む。  さすがに罪悪感を覚えたが 「そうしていただけたら、助かります」  石原は頑なに認めなかった。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加