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「さっきの定期船で、変な男が来たんだよね」
「変な男? 観光客ですか?」
風光明媚なこの島に、自然を満喫しに訪れる観光客は多い。
3年の月日が、漁業メインの島の産業を、漁業と観光がメイン産業に変えていた。
おかげで定期船とホテルの利用客は増えたが、ホテルのオーナーでサーフィンをこよなく愛す藤本は「ゴミが増えた」とちょっとだけ嘆いていたが。
「それが一人で来てるみたいで、さ」
確かにそれは変かも。
旅行目的の観光客は大抵複数だからだ。
「ぶらり一人旅ってヤツでしょうか?」
「ねいちゃああくてびていしかないこの島に?」
(竹さん、すばらしい。果敢に新しい言葉を仕入れていますね)
密かに石原は感心した。
「とにかく、変! 変な若い男だったんだよ」
言いながら図々しく竹は、駐在所に上がり込んだ。
備え付けのイスを竹に譲ると、石原は、もう一杯お茶を準備した。
竹がイスの上にちょこんと正座をする。
「どうぞ」
と出せば
「ありがと」
まるで喫茶店の常連客のように、竹は茶を啜った。
石原は、予備の折りたたみイスを出すと竹の横に座った。
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