04-1.前

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「あ、すみません」  まずは無断で入ったことを謝罪したが、 「勝手に入ってくんじゃねえ!」  男は言葉を遮って、石原に掴みかかった。 「ちょ、ちょっと待って! ちゃんとインターフォンは押したんですよ」  まさしくテリトリーを荒らされた獣。  男は石原の言葉に一切耳を貸さずに問答無用とばかりに、石原の襟首を掴もうとした。  だが、男の手は空を切った。 「ちょっと待ってってば……!」  間一髪で、石原が後ろに避けたのだ。  190センチ近いこの男に捕まれ持ち上げられでもしたら、きっと石原は、つま先しか付かない。  いくら柔道の達人でも、つま先しかつかないわ、体格差がこれほどあるわでは、勝負になるはずもない。 (捕まったら、アウト。しかもコレ、一発でももらったら意識飛びそうだ)  一発も当たってはいけない。  それが、石原を緊張させた。 「勝手に入った訳じゃないんですよ!」  自分を捕まえようと、剛腕が右から左からぶんぶんと襲いかかる。 (うわ。手も、ごっつい……)  体にふさわしいごつごつとした手が、石原を捕まえようと躍起になっていた。  人間を殴ることに躊躇しない動きだった。  金髪男は眼光鋭く、大きな体に似合わず俊敏な動きに若さを感じた。  きっとこれまでに何人もこの男に締めあげられ、殴られているのだろうと思われた。 (暴力を生業にしている輩)  考えられるのは、格闘家かヤクザ。  どちらかで言えばヤクザの方だろう。  動きが自己流を極めている。
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