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「ええっとですね、こちらのお宅なんですが、既に管理が島のものになっています。久子さんのご希望で、お亡くなりになったら島に寄付するようにって」
「えええええ?!」
金髪男は、先ほどと同じく驚きの声を隠せなかった。
「こんなに家具も残っているのにと思われそうですが……。島の物件になっていました」
「そう……」
そしてがっくりと音がしそうなほど落ち込む彼に、石原への敵意も消え失せたように見えた。
本当にだんまりとなってしまった男に
「それにしても、綺麗にしましたね」
励ますかのように声をかける。
石原は家の中を見渡した。
6年もほったらかされた家なのに、驚くほどきれいだった。
きっと蜘蛛の巣と埃だらけだったろうに、それが一つとしてない。
残された古い家具と板間の床は陽に当たって色が褪せ、古めかしさはあるものの、どれも見事なまでに拭きあげられていた。
男はそれに答えなかった。
逆に
「……ばあちゃん、死んだのか?」
と尋ねてきた。
「え? あ……」
まさか知らないとは思わなかった。
無神経な言葉を浴びせてしまったと石原は後悔した。
「すみません。不躾なことを言ってしまいました」
「別に、……いいよ」
男は不愛想に、そっぽを向いた。
「で、ばあちゃんは死んだのか?」
「はい。もう6年も前の話です」
「6年……」
男は、また黙る。
もしかしたら、祖母との生活を始めようとこの男は都会からやってきたのだろうか?
祖母が死んだとは知らずに、いつ帰ってきてもいいように生活が始められるよう掃除して待っていたのか?
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