127人が本棚に入れています
本棚に追加
「何、すんだよ!」
石原は無意識に金髪男の頭を撫でていた。
「あ、すみません」
懲りずにまたもや怒られた石原は謝るしかなかった。
(なんでしょうね……? あまりにしょげているようで。つい。マコトさんみたいに扱ってしまった……)
金髪男を撫でた手を激しく撥ね除けられ、石原は
(当然の反応ですね)
と深く反省した。
撥ね除けられた弾みで、石原の右手は赤くなっていた。
痛いが、悪いのはうっかり撫でてしまった自分だ。
「君、名前を教えてくれる?」
「……」
「あ、僕は石原っていうんだけど」
「……」
いよいよ口を閉じてしまった男に、石原は戸惑った。
(あー、しまった……。迂闊に触って、完全に怒らせちゃった。これは聞き出すのは無理かな。だったら……連絡船の乗船名簿でも見せてもらうか)
乗船名簿に偽名を使っている可能性もあるが。
今、無理に聞き出すのも難しいだろうと石原が考えていた時
「ケン……」
ぼそっと男が答えた。
まさか答えてもらえると思わなかった石原がびっくりして
「緒方……ケン、くん?」
訊き返すと
「ケン、でいい」
そう言って、ケンは視線を反らした。
「あの……もしよかったらですが、ホテル紹介しますよ」
「金がねえ」
「……じゃあ、駐在所に来ます?」
「行きたくない」
「それは……困りましたね」
「? あんたが困るのか?」
ケンは顔を上げた。
「勝手な宿泊は、この島では条例で禁止されていて、罰金なんです」
観光もメイン産業入りしてからか、勝手に島でキャンプする者が出てきた。その為にできた新しい条例だった。
最初のコメントを投稿しよう!