04-1.前

13/15
前へ
/133ページ
次へ
 また黙っちゃった……と石原が困惑していたら 「あの、さ」  急に緒方ケンの方から話しかけてきた。 「はい?」 「逃げたりなんかしないから、30分……いや15分でいい。外に行ってて」 「え? どうして?」 「どうしても」  そのままぐいぐいと背中を押され、石原は玄関先まで追い出されてしまった。 「あの……!」  石原の言葉は遮られ、ぴしゃんと鼻先でアルミ戸を閉められた。  それで仕方なく、石原は玄関脇の通路から裏に回ることにした。 (僕に見られてまずいことがあるんだな)  悪い予感がする。  二日間も行方不明だった男だ。  その間、何をしていたか分からない。 (この家から何か盗むか。いや、持ち込んでいた何かを持ち出そうとしているか、隠そうとしているか?)  いずれにしろ不届きな奴……と思いながら、石原は庭から覗いて見ることにした。  幸い、緒方ケンは、ここまで手を付けられなかったらしく、草はぼうぼうで庭に回った石原をうまく隠してくれた。  濡れ縁の向こうに和室。  そこに大きな人影が見える。  緒方ケンだ。  石原は音を立てぬよう、そうっと近付いた。  覗いた和室には、古びた仏壇があった。  何かを隠すにはうってつけだ。 (仏壇まで置き去りとは……。島の役所の方、管理しなさすぎですね)  残念ながら、毎年、管理する空き家は増える。  次の住人がなかなか見つからずに実質ほったらかし状態だった。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加