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また黙っちゃった……と石原が困惑していたら
「あの、さ」
急に緒方ケンの方から話しかけてきた。
「はい?」
「逃げたりなんかしないから、30分……いや15分でいい。外に行ってて」
「え? どうして?」
「どうしても」
そのままぐいぐいと背中を押され、石原は玄関先まで追い出されてしまった。
「あの……!」
石原の言葉は遮られ、ぴしゃんと鼻先でアルミ戸を閉められた。
それで仕方なく、石原は玄関脇の通路から裏に回ることにした。
(僕に見られてまずいことがあるんだな)
悪い予感がする。
二日間も行方不明だった男だ。
その間、何をしていたか分からない。
(この家から何か盗むか。いや、持ち込んでいた何かを持ち出そうとしているか、隠そうとしているか?)
いずれにしろ不届きな奴……と思いながら、石原は庭から覗いて見ることにした。
幸い、緒方ケンは、ここまで手を付けられなかったらしく、草はぼうぼうで庭に回った石原をうまく隠してくれた。
濡れ縁の向こうに和室。
そこに大きな人影が見える。
緒方ケンだ。
石原は音を立てぬよう、そうっと近付いた。
覗いた和室には、古びた仏壇があった。
何かを隠すにはうってつけだ。
(仏壇まで置き去りとは……。島の役所の方、管理しなさすぎですね)
残念ながら、毎年、管理する空き家は増える。
次の住人がなかなか見つからずに実質ほったらかし状態だった。
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