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04-2.中
「ん? なんか駐在所が綺麗な気がする」
隅っこにたまっていた埃や海風から舞い上がってくる砂粒が消えた。
「台所、白くなった気がする」
壁に飛んでいた油ハネの痕も消えた。
「もしかして、二階、片づけてくれました?」
元々物置にしていた二階部屋は、ケンの部屋でもあったが、すぐには物を片付けられないので部屋の隅に寄せただけだった。それがなんだかきちんと整理されている。
「おう。暇だからやっといた」
意外にもケンは家事の達人だった。
掃除や片付けが得意で、料理も好きみたいだ。
「得意と言うより慣れだな。俺、以前は、そういうことばっかりしてたから」
と言う。
昼間に流れているワイドショーで『片付け術』や『お手軽料理』で学んだらしい。
聞けば、都会で兄と二人暮らし。
夜に兄の仕事の手伝いぐらいで、昼間は特にすることがなかったので、TVで学んだことを実践し、部屋の掃除やご飯の用意をしていたらしい。
それをこの駐在所でもやっている。
「へえ。お兄さんのしている夜の仕事って?」
「えーっと……(店で酒を飲んだのに金払わない人に金を払わせたり、駅裏で兄貴の商売の手伝いしたり……とは言わない方がいいか)……まあ、いいじゃねえか」
家主ではあるが、さすがに警察官の石原に言ったらマズイとケンは言葉を濁した。
「……気が向いたら教えてくださいね」
想定内の答えだったなと石原は思いつつ、言うと
「教えないと、追い出すのか?」
ケンが不安そうな顔をした。
「まさか。そんなことしませんよ。ケンが気が向いたら……って言ったでしょ」
と言いつつ、うっかりとまたケンの頭を撫でてしまった。
「あ、すみません」
石原は慌てて手をひっこめた。
(なんか、可愛い顔するから……)
弟が居たら、こんなだろうかと末っ子の石原は思った。
兄一人、姉二人の四人兄弟の末っ子だった石原は、家業を継ぐ必要もなく、なんとなく受けた警察官試験で採用になったので警察官になった経緯がある。
「いや、いい」
石原に、ケンはぶっきらぼうに答えるだけだった。
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