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髪の根本はわずかに黒くなってきている。
ここに来て、1週間。
最初見せてたケンの態度が和らいだ気がした。
「石原さん……。あんた、いっつも朝からどこ行ってんだ?」
早朝5時、石原が制服に着替え、出かける支度をしていた。
「あ、起こしちゃいました? すみません」
その日はケンも起きだして、二階から降りてきた。
ここに来てからというもの、ケンが6時に起きて朝ごはんを作るようになった。
だが、当の石原は不在。
待っていると、石原が7時ごろ帰ってきてケンが作ってくれた朝食を食べる。
そして通常勤務をするというのが、日課になっていた。
それでケンは、毎朝、石原がどこに行っているのか不思議だったのだ。
「海です」
「何しに?」
「ゴミ拾いです」
確かに片手にゴミ袋、腰のベルトに軍手を挟んでいる。
「それも仕事?」
「いえ。でも、ここ平和でしょ」
「確かに、いい意味でも悪い意味でも何にもないな」
「だから駐在所があっても、仕事は警邏と立番しかなくって。何かしたいなと思い、地元の人がやっているので一緒にし始めたんです」
「ふーん」
というケンの顔からは、全く興味がなさそうでもない。
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