01.志々目真という男

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 志々目真は、少しばかりお調子者で、年不相応に天真爛漫。だが、その所為か人を惹きつける男だった。  新人だからと早めにやってきては、あれこれと人より多く業務をこなそうとしていた。 「そんなに働いても、給料変わらんぞー」  揶揄する岸田に、笑顔で 「5分でもあったら、仕事やりたいんで」  と答えていた。  頼まれたら断れない性格もあるのだろうが、頼んだ事を笑顔で「はい、やります!」と新人ながらも懸命に受けている者を嫌う人間など居ない。  仕事量が増えて、明らかに真に偏っているようだと思われた時には、他の者が率先して代わっていた。  あまりにも難しい仕事だと 「新人のそいつには、まだ早い」  と止める者も居たので、仕事でパンクすることもなかった。  大体、真の基本のステータス値は高いようで、大抵のことならやり遂げられた。  ますます周りの者からも信頼厚く、頼られることも多くなり、それに伴って真の力になりたいという者も着実に増えていった。    そういう男が、右も左も分からぬ新人の教育係に任命された石原を、いつからか熱いまなざしで見つめるようになった。  石原がどこに居ても、本人意図せずに目で追ってしまうらしく、これにはさすがに石原も気付いていた。  だから、なおさら苦手に思っていたのだ。 (彼はキャリアだ)  警察における大卒採用は、上級職候補生だ。  そんな男の一時の気の迷いになってはいけない。 (そう、思っていたのに…………)
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