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志々目真は、少しばかりお調子者で、年不相応に天真爛漫。だが、その所為か人を惹きつける男だった。
新人だからと早めにやってきては、あれこれと人より多く業務をこなそうとしていた。
「そんなに働いても、給料変わらんぞー」
揶揄する岸田に、笑顔で
「5分でもあったら、仕事やりたいんで」
と答えていた。
頼まれたら断れない性格もあるのだろうが、頼んだ事を笑顔で「はい、やります!」と新人ながらも懸命に受けている者を嫌う人間など居ない。
仕事量が増えて、明らかに真に偏っているようだと思われた時には、他の者が率先して代わっていた。
あまりにも難しい仕事だと
「新人のそいつには、まだ早い」
と止める者も居たので、仕事でパンクすることもなかった。
大体、真の基本のステータス値は高いようで、大抵のことならやり遂げられた。
ますます周りの者からも信頼厚く、頼られることも多くなり、それに伴って真の力になりたいという者も着実に増えていった。
そういう男が、右も左も分からぬ新人の教育係に任命された石原を、いつからか熱いまなざしで見つめるようになった。
石原がどこに居ても、本人意図せずに目で追ってしまうらしく、これにはさすがに石原も気付いていた。
だから、なおさら苦手に思っていたのだ。
(彼はキャリアだ)
警察における大卒採用は、上級職候補生だ。
そんな男の一時の気の迷いになってはいけない。
(そう、思っていたのに…………)
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