04-2.中

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 誘うなオーラが出てないことを感じて、石原は 「よかったら君も来ます?」  何気なくケンを誘ってみた。  するとケンは 「俺を一人で置いておくと、なんか盗るかもしれないしな」  自虐的に答えた。  つまりは「ついていく」とケン流に返事したのだ。 「あはは」  突然、石原は声を上げて笑った。 「ここに君の欲しいものなんか、ないでしょ?」  と軽く言うと 「そうとも限らない」  ケンが不敵な笑顔で答えた。 (おやおや、目利きじゃないな)  駐在所には、金目のものなんか一切ない。 「言っておきますが、ここにあるものは売り飛ばしたって、大した金額にならないものばっかりですよ」  盗られてもさして困りはしないが、警察官の立場として、一応、釘は刺しておく。 「ちなみにここで一番高いのは、マコトさんです」  と言うと 「あいつ、高いのか?」  ニヤニヤと笑っていたケンが、意外なマコトさんの価値に驚いた。 「正規ルートで買えば、結構なお値段です。でも、マコトさんはケンを見ると吠えるし噛みつくしで、とても持ってはいけないでしょ?」  マコトさんは新参者のケンに心を開かないばかりか、むしろ家族の序列としてケンを下に見ているようだ。  「あいつなんか持っていかないよ。大体、俺の欲しいものは、それじゃない」 「?」  他に何かよさげなものがこの駐在所にあっただろうかと、石原は考えたがこの時には分からなかった。
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