04-2.中

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 結局、その日からケンも早朝のゴミ拾いにつきあうようになった。 「石原さん、あのちょび髭に気を付けろ」 「ちょび髭……って、藤本さん? どうして?」 「ゴミ拾いの時に、石原さんばかり見ている」 「……」  石原がなんと答えようか悩んでいると、ケンが説明不足だったかと思い 「具体的に言うと、石原さんのケツばかり見ている」  言葉を足した。 (えーと……、どうしようかな)  赤裸々な言葉に、石原は赤くなる。  だいたい何故ケンは藤本の視線に気付いたのか。 (ケンも同じものを見ていた……と考えていいんでしょうか?)  同じもの……つまり二人して石原の腰ばかり見ていたから、ケンは藤本の視線にも気づいた。 「あ……、うん。そうだね。そうする」  歯切れ悪く答えると 「なんだ? もしかして、あのちょび髭が好きなのか? だから一緒にゴミ拾いなんかしているのか?」  余計な世話を焼いたかとケンは恐縮したようだったので 「いや、そうじゃない……、けど」  慌てて否定する。 「けど? なんだ?」  なんだか尋問受けている気がする。  しかも内容は自分の「好きな人」だから、妙に恥ずかしい。 (いつもと立場が逆転してますね)  高校生じゃあるまいし、そんな話できゃっきゃする年はもうだいぶ前に通り過ぎた。 (勘だけど、藤本さんは単なるスケベ目的なんだよな)  藤本は誰でもよかった。  元・都内のサーファーだった。親が継げと言うので、ちょうどいいと脱サラしてシーサイドビューホテルを継いだ。嫁は、道楽が過ぎる、離島には行きたくないと離婚されたそうだ。以降、良い出会いはないらしい。だから、それなりにたまるものもあるのに違いない。
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