04-2.中

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 眠れない日々から解放されて3日目だった。  今夜もと、当たり前のように石原は隣のケンへ手を伸ばしながら 「ケン、起きてますか?」  と、声をかけた。 「ん……。何? 石原さん」  布団を頭からかぶっていたケンは、石原の方に少し布団を上げて目だけを覗かせた。 「今日も手を握ってください」 「……」  ケンは、しばらく答えなかった。 「……それ、さ。もう、やめない?」  なんだか不機嫌そうに見える。 「え……?」  断られると思っていなかった石原は、言葉に詰まった。 「あ、そう……です、よ、ね……」  所在なさげに、出した手をもぞもぞと布団に引っ込める。 「やはり……30男の手を握って寝るのは、気持ち悪いですよね……」 「え? 石原さん30(歳)だったの?」  布団を撥ねとばして、ケンががばっと起きあがった。 「へえー、6つも年上だったんだ。年上だとは思ってたけど、そんなに上だったなんて……全然、見えないよ」 「ふふ、若く見えますか?」  布団からケンが出てきてくれたのが妙に嬉しい。  石原も体を起こし、目を細めて笑った。 「実はですね、僕、ギリ二十代なんです。誕生日が来たら、30歳ですよ。ケンは24歳だったんですね」 「あ……、うん。俺、言ってなかったっけ?」 「はい、初めて聞きましたよ」 「俺のことはいいよ。石原さんの誕生日、いつだよ?」  先ほどまでと打って変わってケンが、目を輝かせて聞く。  やたらと気の利く彼のことだ。  おそらく石原の誕生日をなんらかの形で祝うつもりなのだろう。
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