04-2.中

10/15
前へ
/133ページ
次へ
「そういうケンは、いつなんです?」 「俺? 1月11日。で、石原さんは?」 「8月8日ですよ」 「へー。もうすぐじゃん」  石原がニコニコと笑顔でケンの顔を見つめると 「あ、でも、手は繋がないからな」  ケンがすかさず断りを入れてきた。 「それは……まあ、仕方ないですね。僕、30男ですから」  石原の笑顔が曇る。 「いや、気持ち悪いとか、そんなんじゃなくて」 「じゃあ、どうして?」 「実は、俺が寝不足なんだよ」 「君は僕と手をつなぐと眠れないんですか?」 「……うーん……」  言葉を選びつつ 「まあ、そう……かな?」  適当な返事が見当たらずにケンはそう答えた。  石原と手を繋いで、密かに一人で舞い上がっているだなんて知られるのは絶対にイヤだとケンは思った。 「そうだ、姿勢」 「姿勢?」 「そっちに手を伸ばしたまんま寝るの、ちょっと姿勢がきつくて」 「なるほど……」  石原は納得したようだ。 「もう、眠れるようになったんだろ? だったら、いいじゃねえか」 「それもそうですね。じゃあ、今日からは手は繋がずに寝るとしましょう」  ブツブツと己に言い聞かせるようにして石原は布団をかけ直し、横になった。 (良かった。俺のお役ごめんでまた二階で寝ろと言われなくて)  手は繋がないと言ったものの、また別室で寝るのは嫌だったので、石原がそこに気づかない様子にケンは安心した。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加