04-2.中

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(困りました。眠れません……)  この3日間しっかり寝た所為もあり、この日は久しぶりに夜中に目が冴えてしまった。 (明日も5時起きだし、とにかく寝なくっちゃ……)  早く寝ようという思いから、きゅっと強く目を瞑る。  街の灯りがほとんどない島では目を開けても真の闇だ。  むしろ目を瞑った方が色々なことが瞼の裏に浮かび上がってくる。 (手……か)  握ってもらうだけであんなに安心するとは。 (意外に僕の中でトラウマになってたのかな?)  不意に真のことを思い出した。 (それとも……)  生来の色々想像してしまう性格が災いし、 (ケンが僕にとって安心の存在なのかな?)  という可能性に気付くと同時に (いや。ないな)  即座に否定した。  先ほど知ったばかりだが、6歳も年下を好きになるはずなどない現実に気付く。  そして (真さん……か)  随分と懐かしい。 (結婚して3年になるし、そろそろいいかな。気になることがあるし、明日にでも電話をかけてみようかな)  色々と思いを巡らしているうちに、なんとなくうとうととし始めた頃だった。  草木も眠る丑三つ時とは、よく言ったものだ。  真っ暗な中、虫の声しか聞こえぬ駐在所。  その奥の間に、突如ぎし……ぎし……という床が軋む音が聞こえてきた。  息を殺して、何かが石原に近付く気配がした。 (ひ……)  部屋が明るかったら、石原の顔がありえないくらい真っ青になっているのをみとめることができただろう。 (久しぶりに出た……!)  しかし、眠りに落ちたばかりの身体は微動だにしない。  ただ、近付くものの気配のみを感じるだけ。
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