04-2.中

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 不幸なことに夏の風は生暖かい。  そのことが、ますます石原を凍り付かせた。 (そうですよ。僕がお化け嫌いになったのも、全部真さんの所為なのに……!)  深夜のパトロール中に、真はパトカーのハンドル握る石原の眠気覚ましにと同僚から聞いた都市伝説をとくとくと話してくれたのだ。  幽霊が乗ってくるので絶対にタクシーが「空車」にして走らない市道の話。誰も立てない筈の山道入り口トンネルの上に白い人が立っている話。携帯電話が普及しまくっている現代に利用者もいない町はずれに何故か撤去されずにいつまでも存在し続ける電話ボックスの話。  石原が 「へー」 「ふーん」 「そーですかー」  と内心怯えているのをひた隠しにして、できる限りの無関心を装って右から左に流していたのに気づかずに、無駄に有り余るサービス精神で臨場感豊かに話してくれるのだ。  それを、よりにもよってなぜこんな時に思い出すのだろう。 (気のせい。気のせい。絶対に、気のせい……!)  多分、金縛りに遭ってなくても怖くて目を開けることなんかできやしない。  目を開けて幽霊でも見た日には、石原は速攻本土に異動希望を出さざるを得ない。
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