04-2.中

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(ケン、だ!)  近付いてきているものの正体は、隣で寝ているはずのケン。 (なんで? ケンが?)  警察官を異常に警戒していたが、まさか突然、こんな風に襲いかかるなんて思いもしなかった。  出会った当初こそ掴みかかられたことはあったが、それ以降は警邏やゴミ拾いなど誘えば、無言でどこにでもついてくるようになっていたので、すっかり気を許していた。 (まさか? 今頃、寝首をかく気か?!)  と思った時には、遅かった。  ケンの大きな手が、気配を殺し、そっと重力を感じさせないタッチで石原の首にかけられる。 (油断した!)  通常なら飛び起きて、捕まらぬよう距離を取ることも、投げることもできただろうに。オカルト的な何かだと思い込んで動けずにいたので、出遅れてしまっていた。  ケンの体格で真上から捕まれては、抵抗のしようがない。 (このまま、首を締められる!)  石原の米神に冷や汗が流れた。  どこにも逃げ出せる隙がなかった。  彼の腕力なら、このまま石原の頸部に指をめり込ませることも容易い。  石原は今となっては成す術なく、次に来るであろう、ケンの全体重を乗せた腕の衝撃に身構えるしかなかった。
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