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(ケン、だ!)
近付いてきているものの正体は、隣で寝ているはずのケン。
(なんで? ケンが?)
警察官を異常に警戒していたが、まさか突然、こんな風に襲いかかるなんて思いもしなかった。
出会った当初こそ掴みかかられたことはあったが、それ以降は警邏やゴミ拾いなど誘えば、無言でどこにでもついてくるようになっていたので、すっかり気を許していた。
(まさか? 今頃、寝首をかく気か?!)
と思った時には、遅かった。
ケンの大きな手が、気配を殺し、そっと重力を感じさせないタッチで石原の首にかけられる。
(油断した!)
通常なら飛び起きて、捕まらぬよう距離を取ることも、投げることもできただろうに。オカルト的な何かだと思い込んで動けずにいたので、出遅れてしまっていた。
ケンの体格で真上から捕まれては、抵抗のしようがない。
(このまま、首を締められる!)
石原の米神に冷や汗が流れた。
どこにも逃げ出せる隙がなかった。
彼の腕力なら、このまま石原の頸部に指をめり込ませることも容易い。
石原は今となっては成す術なく、次に来るであろう、ケンの全体重を乗せた腕の衝撃に身構えるしかなかった。
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