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04-3.後
真と連絡を取るには、一人にならないといけない。
そう考えた石原は、ケンに
「今日は島の奥の方まで警邏に行ってきます。ケンは駐在所の留守番を頼みますね」
と断りを入れた。
これまでも何度かそういうことがあった。
島に点在する老人宅を訪問するのも石原の仕事の一つ。
大抵は駐在所や朝市が開かれる港の近くに居を構えていたので、ケンも一緒に連れて行くことが多かった。が、中には往復と訪問で数時間かかる遠い所に住んでいる人もいた。そんな時には駐在所を数時間も空けるわけにはいかないので、ケンに残ってもらっていた。もしもの時には、携帯電話で連絡を入れるように頼んでいたのだ。これまでそんな緊急事態は一度もなかったが、石原にとってケンが留守番をしてくれるのは、ありがたい。
「……分かった」
無愛想に答えるケンの顔をじっと見つめる。
「……」
今のケンの表情は読みにくい。
いつも仏頂面だが、今朝はますます無表情だった。
(あえて無表情にしているみたいだ……)
何かを隠しているように思えた。
昨夜の謎の行動もある。
「えっとですね……、今日は、島のかなり奥の方のお宅まで行く予定ですので……二時間は帰れないかもしれません」
と石原が言うと
「分かった。留守番しておくから、駐在所のことは気にせずに行ってこいよ」
とケンがやっぱり無愛想に答えた。
二時間。
あえて時間を言ったのは、その時間、ケンを泳がせるためだ。
自分と一緒の時は何もしなくても、一人になったらあるいは何かしらの行動を起こすかもしれない。
(昨日の不可解な行動が分かるかもしれない)
駐在所の留守を預かってくれるケンに、石原は少しばかりの後ろめたさを感じたが、
(すみませんね。実は30分くらいで帰ってきますよ)
と考えていた。
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