04-3.後

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「……さては、酔ってますね?」  冷静に判断する。  すると、すかさず電話の向こうで椅子がガタガタと動く音が聞こえた。  真が座り直したと思われた。 「む? なぜ分かった?」 「朝っぱらからあなたが電話に出るのは、非番の時しかないですから。今日は夜勤明けの非番なんでしょ? そして、暇なんで飲んでいるんでしょ?」 「うわー! 全部当たってる! さすがは陸裕。見抜く力衰えてないなー!」 「じゃあ、頼みました」 「頼まれましたぁ!」 「一週間後にまた電話しますね」 「一週間? 余裕ぅ!」 (本当に大丈夫かな? ちゃんと覚えているかな?)  大げさに騒ぐ酔っぱらいを相手にできぬと電話を切ろうとしたが、真の一言が繋ぎ止めた。 「でも、どうして?」 「え?」  どうしてこの時、聞こえなかったことにして即座に切らなかったのかと石原は後で悔やんだ。 「どうしてって……」  改めて聞かれれば、その通りだ。 (ケンの過去を調べて、僕はどうする気なのだろう?)  犯罪者だったら逮捕するつもりなのか? (だったら、とうの昔にしている)  と、いうか、むしろ捕まえたくない。  逮捕するつもりもないのに、どうしてケンの過去を知りたいのだろう?
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