04-3.後

15/36

127人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
「どうしましょう、真さん」 「もうこの際知らんぷりして、放っておいたら?」 「そうはいかないでしょ? 現在、駐在所に置いているんですよ。その限りなくクロに近い男を。さすがにまずいでしょ」 「じゃあ、せめて何したのか分かったら、どうにかできるかもしれないなー」 「どうにかできるんですか?」 「俺の封印されし闇の力を使えば……行けるかもしれない」  闇の力……多分、真の持つ人脈のことを言っているのだろう。 「行けるかもしれないし、行けないかもしれない」  酔っ払いは、むにょむにょと語尾を誤魔化した。 「ありがとうございます。それだけ分かったら、後は僕が聞いてみます」 「お? 行くのか? 行け! 勇者・陸裕! MI・CHI・HI・RO!」  なんだかEXILEみたいな言い方をし始めた。 「MI・CHI・HI・RO! MI・CHI・HI・RO!」  ライブかコンサートのノリで連呼する真に (うるさいな、酔っ払い)  と思った時、すかさず 「うるっさい!」  電話の向こうから奥さんらしき人に 「さっき寝たばかりだったのに!」  叱りあげる声と赤ん坊の泣き声が聞こえた。 (奥さん、GJです)  内心、石原は拍手していた。  とりあえず 「また連絡しますので、次は……お酒抜きで頼みますよ」 「はーい」  多少、気を遣って声のボリュームを落としつつ真は気の抜けた返事をした。  おそらく、この後もまた酒をあおるのであろう。 (お酒、大好きだったもんなー)  日頃のストレスもあってか、大体非番になると用事がない限り朝から飲んだくれていた。  前回の非番の日は、石原の頼みを聞くために、すぐに酒をやめて動いてくれたのだろう。 (感謝します。真さん)  電話を済ませ、石原は今度こそ30分で駐在所に戻った。 (絶対にケンに口を割らせます!)  という固い決意の元に。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加