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一生に一度の
世界の大体の女の子は、かわいい。少なくとも俺よりは。
「充はかわいいわよ。」
何故か、せっかくだからスキンケアしましょ? と言われてまって、先ほどからいい匂いのする何かを俺の顔に塗りたくりながら、先輩は言い聞かせるように言う。
先輩はやさしい。
俺が誰の事を好きなのかを聞かれたこともないし、うじうじしている俺を怒ることもしない。
今日は手作りなのと言ってクッキーをくれた。
こうやって、数日に一度俺の前にあらわれては、優しくしてくれるのだ。
なんで突然手作りクッキーと思っていると、料理部に所属していると先輩は笑って教えてくれる。
「料理部ですか……。」
何となく女の子がやるイメージの部活だが、先輩には似合っている気がする。
「折角だから充も入る?」
週二回の活動だから負担も少ないわよと言われる。
それに校舎のはずれにある家庭科室からなら、豊の恋がみのっていく様を少しは見なくて済むのかもしれない。
「お試しで体験入部みたいなことってできますか?」
「いいわよ。他の部員もきっと喜ぶわ。」
ニコニコと先輩が笑う。
「先輩は、恋ってした事ありますか?」
脈略も無く聞いてしまう。
それは先輩が優しいからなのかもしれない。
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