一生に一度の

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何か、話そうと思った時にはもう涙がこぼれ落ちていた。 馬鹿みたいに泣いたってどうにもならない事は、幼馴染に好きな人がいるって知った時から分かっていた。 勝手に失恋して、勝手に立ち直るべきなのだ。 だって、今だって豊にに伝えるつもりは無いのだ。 なのに、何となく先輩に電話してしまう。 「もしもし?」 先輩の声は普段より少し低い。 けれど、優し気な雰囲気を声に纏っているのは、いつもと変わらない。 泣いているとは言っていない。 「ただ、何となく声が聞きたくて。」 というとても面倒な女子かということを思わず言ってします。 先輩はケラケラと笑いながら「また、おブスな顔してるでしょ?」と言った。 そうなのかもしれない。 だけど、俺の事をバカにしたような感じはしない。 電話も切られない。 何と説明したらいいのか分からず、口を開けない間、先輩は静かに「大丈夫よ。」と言って待っていてくれた。
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