一生に一度の

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これじゃあ、出会った時と一緒だと思った。 「明日、フォンダンショコラ作ろうとおもうんだけど、一緒に食べない?」 先輩は突然、そう言った。 「アタシんちに来て一緒に作らない?」 出来立ては美味しいわよ。 「失恋を癒してくれるのは、美味しい食べ物と新しい恋って相場が決まってるのよ。」 だから、まずは美味しい食べ物色々食べましょうよ。と言われて、涙声で思わず「はい」と言ってしまう。 多分明日はまたまぶたが酷く腫れてしまっているだろう。そんな状況で人にあっていいのか返事をした後なのに悩んでしまう。 「学校で、待ち合わせでいい?」 集合時刻を穏やかに言う先輩はその後「少しでも眠れるように子守歌でも歌おうかしら。」と言われて、泣きながら少しだけ笑った。 結局先輩は歌を歌わなかった。 静かにおやすみと言われた声が耳の奥で響く様に残った。
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