一生に一度の

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翌日待ち合わせた学校で、先輩は俺の顔を見ても何も言わなかった。 先輩のおうちは家族は出かけてしまっていたみたいだ。 キッチンに向かい合う様にしてあるダイニングテーブルには椅子が四脚ある。 「今日は、ここに座ってゆっくりしてて。」 そう言われてのろのろと座る。 それからホットミルクの入ったマグカップをすぐに渡された。 ぼんやりと、マグカップの中にはっている牛乳の膜を眺めていると、何となく涙がまた滲みそうになる。 カシャカシャという料理中の音だけが室内に響く。 甘い匂いがしてきてようやく、昨日から何も食べていない事を思い出す。 「後は焼きあがるのを待つだけ。」 そう言って先輩は俺に笑いかける。 「今度は一緒に作りましょうね。」 呆れたりはしないのだろうか。昨日から馬鹿みたいに泣き続けてる事は明白なのに。 折角だからお昼もうちで食べてかない? そう先輩は困った様な笑顔を浮かべた。
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