1 思い出話は突然に

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1 思い出話は突然に

「時間がないので、今回は以上です」  授業の終わりを告げるチャイムの音が聞こえると、黒板の前に立つ僕達三人に見向きもせず教室はざわつき始めた。 「吉田達で好きなように決めちゃっていいよ、何でも手伝うからさ、あー。暑」  一番前の席に座っている高木が下敷きを団扇代わりにして扇ぎながら、僕らを見上げて気だるそうに言った。  こうなる事は最初からわかっていたが、僕たち三人は揃ってため息をつかずにはいられなかった。窓の向こうから聞こえる蝉の声と、教室の机や椅子の擦れる音が混ざり合い、不快極まりない。  この時間は、夏休み明けに行なわれる文化祭の出し物について話し合うはずの時間だった。  何も書かれていない黒板と「文化祭係*吉田直導(よしだなおみち)星川楓(ほしかわかえで)加島樹(かしまいつき)」とだけ書かれたまっさらなノートを見て、三人で目を合わせる。そして、もう一度大きなため息を吐いた。 「ま、予想通りといえば予想通りだな」  教卓に頬杖をつき、散り散りになるクラスメイトを見つめながら、樹は言った。 「しょーがない、放課後残って三人で話すかあ」  楓は、やれやれといった感じで文化祭関連の書類をまとめている。
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