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2 部屋の森 -加島樹の部屋-
俺が二人にある提案をしてから一ヶ月。文化祭前日、正確には日付が変わっていたから、文化祭当日の夜中。蝉の鳴き声は落ち着いたものの、不快感はぬぐえない夜だった。
「これ、絶対怒られるよね」
楓は、大量の土が入った袋を両脇に二つ抱えて言った。
「怒られるだけで済めばいいけど。僕はやめようって何回も言ったからね」
直導が俺の後ろで机を動かしながら弱気な声で共鳴している。俺は、少しだけ心配になりながらも、平静を装って教室に直接蒔かれた土を馴らして言った。
「お前らだって最終的には賛成したじゃねーか、早く終わらそうぜ」
楓は呆れた顔をしながらも、土の入った袋をハサミで開けて教室の床にばらまいた。
「夜中に学校侵入するなんて、ドラマだけの話だと思ってた」
「だって『教室に土と草と木と虫を持ち込んでまき散らします』なんて許されるわけないじゃん」
「当たり前だろ馬鹿」
「誰が馬鹿だ馬鹿。楓も直導見習ってテキパキ動け」
俺と楓は、草木を抱きかかえて運ぶ直導を見た。
「いつきー。これどこ置く? え? 何? 二人して見ないでよ」
「直導お前、実は結構乗り気だろ」
「乗り気じゃないよ。絶対怒られるもん。まあでも、樹の昔の話はちょっと面白かったって思ったかな」
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