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俺は、一ヶ月前のあの日、二人に「森を創ろう」と提案した。もう一度、見たい景色があった。それを創るチャンスが、この文化祭だ。そう思った。
○
俺の部屋は、森に繋がっている。俺がそれを知ったのは、八年前、小学四年生の頃だ。
「あー。つまんねー」
小学四年生の夏は、例年の時間が足りないほどの夏休みとは打って変わって、暇な時間しかなかった。布団に寝転がりながら天井を見る。誰もが楽しみにしているはずの夏休みに、何の気力も無い。
去年までは、毎日友達の健太と近所の森で遊んでいた。健太は虫に詳しくて、カブトムシを捕まえられる秘密の場所を教えてくれた。
「あー。あーあー。つまんなーい。つまんなーい。暇だ、くそ」
俺は、今年の春に転校した。新しいクラスメイトと遊んでも馴染めず、結局一人でぐだぐだしていた。田舎から都会へと越してきた俺は、こっちの小学生が家から出ないでゲームをしているのを知ってショックを受けた。「虫採り」という言葉を出したときの皆の苦笑いが忘れられない。一人で遊ぶ森や自然もどこにもなかった。
「ひまだー、ひまひまひま」
一人で意味も無く喋っていると、母に布団を引っぺがされてカーテンを開けられた。夏の眩しい日が入る。
「暇だ暇だってうるさい、買い物行く? 父ちゃんも行くみたいだから付いてくれば」
健太がいない夏休みをどうやって楽しめば良いのか分からず、言われるがまま両親について行った。
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